ありがとう Steve Jobs

初めて触ったリンゴはMac Plusだった。
Mac Plusはほわんとしたクリーム色で、食べかけの虹色のリンゴがくっついていて、まるでおもちゃみたいだった。
会社におねだりして買ってもらった2台のうち、1台は私の机の上にやってきた。
このリンゴはまともなデザイン作業なんてまだ何にもできなくて、色だって白いドットと黒いドットの2色しかなくて、ドットインパクトプリンタで出力したOSAKAフォントは12ドットとか24ドットとかのガタガタで、OSもアプリもフロッピーディスクに入っていて、ガチャンガチャン抜き差ししながら起動させてると「こんなんで何か役に立つの?」なんて言われたりもしたけど、「このリンゴがあればきっと何だってできる!」って確信を持つことができた。

初めて自分で買ったリンゴはMac Ⅱcxだった。
退職金を全部使っても足りなくて、最初からついてきたHyper Card以外のソフトはDirectorだけしか買えなかった。最初に作ったのは、辞めた会社へのありがとうメッセージの動画。Hyper Cardのスタックもいっぱい作ったなぁ・・・。もう多分中を見ることはできないだろうけど、Mac Ⅱcxだけはどうしても捨てられなくて、今でも押し入れで眠っている。

あれから何台のリンゴのお世話になってきただろうか?
デスクトップも、ラップトップも、電話も、タブレットも。
グラフィックデザインもUIデザインも、私にはリンゴなしには考えられない。
Jobsがアップルを去っていた間にどんどんデザインが悪くなるのを悲しい思いで見ていたので、帰ってきてくれた時には本当にうれしかった。

でもね、もういい。お疲れさま、Jobs。ありがとう、Jobs。
Jobsが与えてくれたのは、モノの価値でも機能の価値でもない。
デザインすることの楽しさと意味を教えてくれたことが一番大きいんだよね。
どうもありがとう Steve Jobs。
もうちょっと頑張ってみる。