成安造形大学公開講座「情報を可視化してビジネスの生産性を上げるRTDの可能性」

11月22日(土)に、常葉大学造形学部の安武伸朗准教授を講師にお迎えして、公開講座「情報を可視化してビジネスの生産性を上げるRTDの可能性」を行いました。

40分間の講義に、リアルタイム・ドキュメンテーション(RTD)とグラフィック・レコーディング(GR)2つのワークショップを加えた3部構成。一般参加の17人と成安造形大学の学生18人に加え、常葉大学から8人の学生の皆さんにご参加いただき、13:00〜17:00という長丁場でも時間が足りないくらいの熱気あふれる公開講座になりました。

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【第一部】講義

安武先生の講義はまず、ユーザー・エクスペリエンスを生み出すためのデザイン思考の大切さからスタートされました。そして、

  • そうした共創的なワークショップにおけるRTDの役割
    ・思考プロセスの可視化による合意形成サポート
    ・目的や手法理解の状況指摘を通したファシリテーション
    ・事後のリフレクションに利用して学びを深める効果
  • 記録手法の種類と適性
  • 合意・理解・共感を生み出すしかけ 

等々、まさに「情報を可視化してビジネスの生産性を上げるRTDの可能性」を具体的に解説していただきました。

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そしてこの講義の間、常葉大学の西村奏美さん・望月香那さんの2名が別々の手法を用いてリアルタイムで実演。

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付箋紙の使い方や発話の取捨選択状況などの技術をその場で見ることができました。

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書き方は異なりますが、両方共要点が押さえられていてわかりやすいです。

【第二部】発話の構造化ワークショップ:付箋紙を使用したRTD

ワークショップはまず、二段階の練習から始まりました。

最初は質問と答えのはっきりした会話、その次にフリーな会話を、時間・発話・ふるまい・特記事項の4種にわけて付箋紙に記録してA3用紙に貼っていきます。

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中には講義のメモが既にグラフィック・レコーディングになっている参加者も。

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ホワイトボードには望月さんと安武先生による模範解答も同時進行で貼りだされていきます。

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2つの練習は時間が来たら隣の人とピア・レビューして確認しました。

それが終わるといよいよクリエイティブ・ディスカッションに対するRTDを行います。

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出された課題に対してディスカッションをするグループと、付箋紙を使ったRTDするグループに分かれて15分間ずつ、ワークを進めます。

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安武先生は各チームを回ってアドバイス。

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時間が来たら出来上がったウォールを使ってリフレクション。

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そして、ディスカッショングループとRTDグループを入れ替えて、別の課題に対して同様のワークを行っていきます。短時間で同じことを立場を変えて行うことで手法に関する理解も格段と深まります。

簡単な練習問題からステップアップすることも、立場を変えてのピア・レビューもそうですが、こういうきめ細かな配慮でワークショップの充実度や演習の定着性を高められているんですね。ほんと、勉強になります。

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議論の展開が整理されたウォールを確認すると、クリエイティブなディスカッションにRTDが役立つことが実感されます。

【第三部】文脈を絵画化するワークショップ:模造紙に描くグラフィック・レコーディング

GRも簡単な課題の練習からスタートします。

まずは、成安造形大学のHPから引用した課題。

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HPに掲載された学長のテキストを、要素に分解してイラストレーションを使用して表現していきます。
抽象的な概念は比喩やデフォルメを使い、文脈の中での関係性を矢印や囲みで表し、複雑な内容はテキストで補います。
目に見える短い文章でありながら、様々なGRが出来上がっていました。

そして再びチームでのワーク。3名の会話を聞き取りながら付箋紙にメモする人とそれを参考に描く人に作業分担してグラフィック・レコーディングを行います。

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今回は時間が足らなかったので5分ほどの短い会話が対象でしたが、セリフを使用したり、枠線や強調色を使った画面内での視線誘導などが取り入れられていて、各チーム、それぞれ特徴のあるペーパーができあがりました。

最後はサンドイッチを食べながら1時間ほど懇親会を行いました。

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ご参加いただいた皆様、ご指導くださった安武先生・西村さん・望月さん、お疲れさまでした。
皆様のおかげで、学びの多い公開講座になりました。ありがとうございました!

そして次の日……

【カスタマージャニーマップのワークショップでRTD】

常葉大学の学生さんたちが、11月23日に京都で行われたUX KYOTOのセミナーでもRTDを実演してくださいました。

セミナーには本学の学生や卒業生も参加。カスタマージャニーマップを使った潜在ニーズの探索にチャレンジしました。

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そして、こちらがワークショップのRTD。この2枚はつながっています。会議の状況がとてもよくわかります。

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常葉大学の学生さんたちのリフレクションの際の指摘は、いずれも的を射ています。

RTDやGRを学ぶことは、単に記録するノウハウを身につけるというようなことではなく、頭と手をフル稼働させて共創の場をクリエイトしていくことなのだということに、改めて気付かされました。

UX KYOTOと当日の詳細についてはこちらを御覧ください。

・UX KYOTOブログ
 http://uxkyoto.hatenablog.jp
・UX KYOTO facebookページ
 https://www.facebook.com/uxkyoto?hc_location=timeline
・情報デザイン研究室(講師の浅野先生のブログ)
 http://asanoken.jugem.jp/?eid=3246
・UX KYOTOに学生スタッフとして参加している荒井菜那さんのブログ
 http://arai-nana.jugem.jp/?eid=12

ゼミ合宿 2014

昨年まで、前半はIT系(学生の調査・分析を発表する形)、後半はコミュニティデザイン系(車座講座)の内容で構成していましたが、今年は両方共集中講義に変更して実施しました。

1部 │ オーバルプランにてUIデザイン集中講義

1)インタフェース・デザイン事務所の仕事

まずは社長の田輪さんにお願いして、ユーザーインタフェース専業のデザイン事務所での仕事の進め方についてお話しいただきました。

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2)スマートフォン・アプリのUI デザイン開発

続いて若手の玉井さんから、スマートフォン・アプリのUIデザイン開発について、提出するデザイン案の幅や考え方を。

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3)健康管理サービスのUI デザイン開発

小松さんからは、健康管理サービスのUI デザイン開発について。PCを使用したWebサービスに始まり、家庭用タブレット端末やスマートフォンのアプリまで、様々なタッチポイントが連動するサービス全体の長期にわたるデザイン事例を紹介していただきました。

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4)Bit とAtom が融合する時代のUI 概念モデル

古高さんには、9月のヒューマンインタフェース・シンポジウムで発表予定の内容を少しだけ簡単に。

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5)思考地図

最後は会長の小林さんから「思考地図」についてご紹介いただきました。次の会議の時刻が迫っていたため短時間でしたが、配布していただいた資料「情報共有のための意味空間配置フレーム<思考地図>」と「インタフェース概念設計における思考地図の活用」の中身はすっごく濃いですよ〜。ちゃんと読んでね>学生の皆さん。

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2部 │ 京町家「庵」にてコミュニティ・デザイン集中講義

京町家「庵」(http://www.kyoto-machiya.com)で行う4回目のゼミ合宿は、リンク・コミュニティデザイン研究所の由井真波さんを講師にお迎えしました。今年は昨年に続いて「筋屋町町家」をお借りしました。

今年のタイトルは<町家で車座講座「実録!進撃!コミュニティデザイン」>。
(昨年の“風雲!”が、更に“進撃!”に進化してました(笑))

グラフィック・デザインコース以外にアニメーション・CGコース、デザインプロデュースコースの学生も加えて14人が参加した恒例の車座講座。今年は一つ一つの事例を例年よりも詳細に紹介していただきました。

1)まちづくり(行政主導のまちづくり)

2)庵とともに(行政発信の観光まちづくり → ビジネス化)

3)地域の元気の担い手たちとの協働デザインスタート
 (観光協会、商工会、地方の小さな企業やお店とともに)
 
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講義の開始前に書いてもらった「コミュニティ・デザイン」のイメージ。

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講義の後で成長したかな?

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今年も終電間際まで予定オーバーで激走していただきましたが、実はまだまだ用意していただいていた内容がたくさんあったんですよ〜。

オーバルプランの皆様、由井さん、どうもありがとうございました。

 

メディアデザイン演習6の教科書を公開します

2013年度のメディアデザイン演習6で使用した教科書を若干バージョンアップして公開します。

 ↓ ここからPDFをダウンロードできます。
インタフェースデザインの教科書

この授業は、成安造形大学のメディアデザイン領域の3年生を対象にした、15回の演習授業です。(1回80分)
サービスフローやユーザーニーズを観察・分析し、新しいサービスの仕組みとそれに伴うインタフェースデザインを企画するために、人間中心設計の考え方に基いたデザインプロセスを体験します。

様々な手法やツールの中からいくつかをピックアップして演習します。(スライドP12以降で赤字表記したもの)
授業では紹介できないものについては、教科書の中で用語だけを簡単に紹介しています。

 

教科書の中では、テーマをかなり限定してサンプルを作成していますが、自由に改変してご利用ください。

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
OKUSA MayumiHuman Interface Design プロセス体験』はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際 ライセンスで提供されています。

iOS7

Appleの新OSが、6月10日のWWDCで発表されました。

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iOS7、私はもっとドラスティックに変更されるのかなぁと思っていたので、最初に見た時には正直言ってちょっと物足りなかったです。ホーム画面の背景が単純なパララックスになっているのは、なんだかチープでおもちゃっぽいなあと思いましたし。。。

でも、よく考えるとこのくらいの方がわかりやすいと、だんだん納得してきました。

今流行りのフラットデザインは、単に見た目の形や色の変更じゃなくて、奥行きや広がりを情報空間に利用するための準備だと思っています。俯瞰と拡大の行き来や、レイヤーの重ねあわせや潜り込み、天から・地から・横から・裏側からの見方を行きつ戻りつするような関係性を検討する思考や表現、コンテンツとコンテキストを重視するための手段としての層化UIには、ボタンやインセットなどの物質的な立体感はちょっと邪魔になるので。

「クリックでページ遷移」の基本概念を一旦リセットして新たな空間概念を再構築するためには、これまでの操作画面を一層化する形でフラットデザインを経由した方がやりやすいんだろうと思います。

期待していたほどの極端な変化ではなかったものの、UIの層化構造の概念モデルをコントロールセンターや通知センターで示してくれたという感じですし、UIレイヤーとコンテンツレイヤーの上下の入れ替えや潜り込みなど、標準アプリの中に取り込んでガイドライン的に用意してくれた感じ。(…というか、むしろ、ここまで自然に移行していくのかと感慨深く感じてしまうのは、やっぱり私がAppleファンだからなんだろうけど)

マウスを介する操作(クリックする:押す・選択する)からマルチタッチ操作(広げたり・掘ったり・掻き分けたり・ずらしたり・かぶせたり…といった)へ、これまでより一段とタッチパネルディバイスに適合させていくんだろうなぁ…と感じた新OSの発表でした。

YouTubeに公開されていたmegalopolis4さんの大阪弁解説を下記に。

元の紹介画面はここ > Apple – iOS 7 – Introducing – HD

Apple – Apple Events – WWDC 2013 Keynote
Apple – iOS 7

また、AppleからiOS7への移行ガイドラインも発表されているようです。まだガイドラインの中身は読んでいないのですが、Teck Crunch Japanのこの記事には、iOS 7向けアプリ開発の原則がリストアップされています。

この中でも、<UIアイテムや、テキストなどのコンテンツ要素のサイズや位置について、具体的に指定するのではなく、状況に応じてシステムから自動生成されるようにする>という部分は、デザイナーにとってとても重要だと感じました。Auto LayoutやDynamic Typeは、現在のIllustratorやPhotoshopのようなツールではデザインしきれない部分です。数年前から言われてきたことではありますが、いよいよデザインツールやプロセスを見なおさないといけない状況になってきた感じがします。

 

UX Kanazawa Vol.4に行ってきました

愛読中のブログ[could]を書かれている長谷川恭久さんが講師ということと、今週のメディアデザイン演習6の内容がペーパープロトタイプの制作ということもあって、金沢まで日帰りで UX Kanazawa Vol.4に参加してきました。

ペーパープロトタイプについては、長谷川さんのサイトの「紙プロトタイピングから始まる問題解決への議論」のppt資料に詳しく紹介されています。

実際、これまでの仕事でも様々なタイプのプロトタイプを制作してきたのでそれ自体全く抵抗はないのですが、グループ内でのシナリオのまとめ方は結構難しいと感じました。これは、学生にやってもらう時も同様で、調査分析ステップを共有しないでシナリオを書く場合、各自の経験の中で問題と感じたり解決アイデアを持っている箇所がそれぞれ異なるからなんだろうなぁ。ワークショップは時間も限られているので、落としどころをピンポイントで見つけることができるかどうかが(実際の仕事としてそれでよいかどうかとは別にして)その場なりのテクニックとしては「あり」なんだとも思うけれど、今回はちょっと「そもそも論」的なところでひっかかってしまってあまり前に進めなかった感じ。

とは言え、やはり要件定義とプライオリティ付けはUI開発のプロセスとしては核になる部分だから、初対面のお二人とここで議論できたこと自体はワークショップとしての収穫でした。
あと、私は自分の中での結論から逆算しすぎる癖があるかも…というところも見つけられたので、これは素直に反省しなくてはね。もうちょっと素直な体験観察からシナリオ書けば良かった。いや、これは本当に当たり前のことだし、通常の仕事ではそうしているつもりではあるのだけれど。

現場で制作したシナリオはあまりにも文字が汚かったのでちょっとだけ直したものが下記。
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ワークショップの後半はペーパープロトタイプの制作。他のチームは皆で検討して誰か1人がまとめて画面を描かれていたところが多かったけれど、私のチームはミニミニスケッチでアイデアを展開しながら全体仕様をざっくりと話合った後、1〜2画面ずつ分担して制作しました。それをまとめたのが下記。
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会場の様子はいちがみさんがUX KanazawaのFBページにまとめて下さいましたが、プレゼンはこんな感じ。ここは同じ会社のデザイナーチームで、とても良くまとまっていました。
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参加されていた皆さんの職種はいろいろでしたが、それぞれプロだということもあって、座学を含めて3時間半でここまで出来るんだということも実感。スピード感はやはり必要。


シナリオをグループワークで制作することの意味や難しさについては、直接長谷川さんにお聞きすることができました。「個人でやってもらった方が効率ははるかに良いんだけど、考え方やアプローチが千差万別であることに気づいてもらうことの方がワークショップとしては大切だと思っている。」とのことで、それは確かにそうだなぁと納得。
ただ、授業では自分で考えた全体の流れのなかで納得してプライオリティを付けることができるよう、シナリオもペーパープロトタイプもまずは個人で制作してもらって、各段階で他の人からの評価を受けるという方法で行こうと思います。

そのほかにもいろいろと気になっていたことについて、懇親会で様々な立場の方とお話しさせていただくことができて、とても参考になりました。中でも、

  • エンジニアの我々もUXデザインにしっかり参加しようとし始めている。

というPFUの松山さんの言葉や、

  • デザインには正解はない、もしくは、デザインには正解に至る(かもしれない)方向は無数にある。だからこそプロトを作って共有する。
  • デザイナーはカンプだけではなく、もっと途中段階のものを開示する勇気を持って欲しい。
  • マルチディバイスやタッチディバイスに対応するノウハウを我々はまだ持っていない。
  • デザイナーフレンドリーなプロト制作ツールがたくさんリリースされ始めている

という長谷川さんの言葉が特に印象に残りました。

HCD-Netサロン

夕方からHCD-Netサロンに参加してきました。

このイベントは人間中心設計推進機構(Human Centered Design Organization)の主催で行われるもので、今回が25回目。京都工芸繊維大学を会場に開催される時にはできるだけ参加しています。

HCD-Netサロン

今年のテーマは「インタラクションとユーザーエクスペリエンス」。
まずは4氏によるテーマに沿った話題提供から。

  1. 「インタラクションとUX」山崎和彦氏(千葉工大)
    • 時間軸・環境軸・感覚軸の上で展開される無数のインタラクションが人間の体験を構成していく。
    • エドワード・タフテの「虫の一生」、「Napoleon’s March to Moscow」
  2. 「コンセントにおけるUXの事例」長谷川敦士氏(コンセント)
    • UXプロジェクトを「サービス・デザイン」「アクティビティ・デザイン」「インタラクション・デザイン」の3段階のレイヤーに分けて考えている
    • 「サービス・デザイン」のプロジェクト・パターンとしては「エスノグラフィ調査」「分析・価値抽出」「サービス・プランニング」の3ステップを意識しているが、プロジェクト毎にそれぞれ最もふさわしい手法を選んで対応している。ex.)分析・価値抽出:ワークショップによる価値抽出・価値マップ・ジャーニーマップ…
  3. 「NECにおけるUCDとUXの事例」河野泉氏(NEC)
    • ペルソナ作り込みとニーズ分析を徹底的に活用したプロジェクター開発の事例
      レンズキャップ→レンズシャッターへ
  4. 「インタラクションとUX」八田晃氏(ソフトデバイス)
    • 情報構造の構築が大切だった時代 ≫ 機能・構造 ≫ 頭で理解する
      ↓ クラウド環境が進み、アプリが小さくなり、受け取り口がスマートになった
      大きく手続きして小さく受け取る時代 ≫ 存在・アンビエンス ≫ 腹落ちする
    • プロセスをできるだけ軽くして、デザイナー自身が体験・観察しながら発見を組み込んでモデリングできるようにLABを作った。(自由度の高いプロジェクション設備によって、観察しながらラフに素早くモデリングする)
    • インタラクションデザインには、ディテールよりもメッセージングが大切

今回最も気になったのは、八田氏の「小さく受け取る時代」という言葉。すごく言えてる。。。検索ワードを打ち込めば、違いが判別できる程度のコンパクトなサイズにまとめられたリストが表示される。ソーシャルメディアのタイムラインには、大きな文脈から小さく切り取られ・引用されたテキストや画像や動画がサラサラと流れていく。それらの小さな切片に反応してリンクを辿ったり、流れゆく同質の切片量が急に増えたことに驚いて注目記事を知る。(流行とはよく言ったものです。。。)

情報は、対象ではなくて環境になっているのだ。だから、受信装置としては、理解するよりずっと前に、雰囲気を感じとることのできるインタフェースの手法が求められている。そして、操作装置としては、常に同じ形のどっしりと安定した大きな操作卓ではなく、小さな切片にふさわしく、切片への反応に最も適したコンパクトで透明なできるだけ近くに置くことのできる小さなモジュールが求められている。・・のだ、多分。

八田氏の話題は毎年とても含蓄が深くて、理解するのに時間がかかる言葉が多い。「ディテールよりもメッセージングが大切」という言葉の意味、何となく想像はできるのだけれど、まだ自分の言葉に上手く落とせないので、今度お会いしたときに質問してみようと思っています。

 

その後、パネル発表とディスカッション。

いつもなら発表を見ながら発表者の方々とお話しするのが楽しみな時間なのですが、今回は、年明けのブログにも書いたように「アウトプットする年」にしたいと考えていたので、ちょっと勇気を出して「ヒューマンインタフェース授業事例報告」をパネル発表してきました。

内容は昨年の紀要に掲載したものとほぼ同じですが、進級展の時のデモも持って行って紹介。他大学で情報デザインを教えていらっしゃる先生方や学生さんに興味を持っていただけたようで、いろいろお話できました。

私のパネルはこんな感じ▼

HCD-Netサロン

HCD-Netサロン

 

会場は、左右と後ろの壁面を使ってパネル展示。展示内容を一通り自己紹介した後で、興味のあるパネルを見ながらパネリストとディスカッションしていく形です。

HCD-Netサロン

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正面には飲み物や軽食がビュッフェスタイルで用意されています。様々な企業や大学のデザイナーと気さくに会話できるこの雰囲気がとても好きです。今年はパネリストだったので他の展示がほとんど見れなかったのが残念でした。

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現実(超)拡張

Augmented (hyper)Reality: Domestic Robocop from Keiichi Matsuda on Vimeo.

この動画を見て、身体性の獲得と消失は同時進行的に起こり得るものだと改めて感じました。

ARは、使い方次第で身体の限界を拡張したり、失われた自由を再度手にするために相当役に立ちそうですが、一方で、Max Headroomで妙な薬入りのハンバーガーを食べ続けながらカウチでバーチャルなTV世界に入り浸ったまま帰ってこなくなってしまった老人達の夢の世界を思い出しました。

ブランディングレイヤーの可視化もこの動画の大きなテーマのようです。
AR(Augmented Reality)は拡張現実と訳されますが、情報はずっと以前から確実に現実にオーバーフローして来ています。
振り返ると、CI・VIの手法で管理されたロゴマークが商品のパッケージに印刷され、大きな電飾看板が街角のビルに取り付けられるようになった時点で、既に私たちの周りにはブランディングレイヤーが張り巡らされていたとも言えます。それが物質を纏う必要がなくなって更に過剰に主張しはじめる可能性を見せてくれています。
ちょっと前まではメディアアートとして認識されていた世界が、一気に広告等の結構泥臭い世界に持ち込まれてくる。ある部分ではビジネスチャンスが確実に生まれるのだろうけど、人間にとってはノイズ量が格段に増加して疲れちゃいそうに感じます。TVとかPCモニタとかのフレームがあった時には静謐なCMにだって意味があったし、うるさいCMが続けばそこから目を逸らしさえすれば良かったのだけど、逸らした先にもその行為自体をトリガーとした新しい情報が表示されたりすると相当鬱陶しい。。。

メディアリテラシーという言葉についても、使いたい情報をどれだけ上手に利用できるかどうかという意味の比重よりも、利用したくない情報をいかに適切に遮断することができるかという意味の比重の方が高くなっていくのかもしれません。

また、自然な動作をそのまま受け入れるユビキタスでタンジブルなインタフェースは、曖昧性をどこまで受容すべきかをより一層問われていきます。現実をそのままラフに操作できるようになることは、注いだお湯がこぼれるとか、指示した覚えのない扉を開いてしまうなどといった危険とユーザーをダイレクトに隣合わせにさせてしまう可能性をも持ってきますから。制限だらけで融通の利かないGUIというのも私たちをそれなりに混沌から守ってくれているのかもしれないって、逆に実感できました。

第5回 HCD-Netサロン

第5回 HCD-Netサロン「インタラクションとHCD」が京都工芸繊維大学で開催されます。会員以外の学生も先着順で参加できるようです。卒業制作展開催中ですし、時間的にも京都市美術館の帰りに寄ると丁度いい感じ。インタフェースデザインに興味のある学生は是非申し込んでみてください。

日時:2010年 1月22日(金)16:30〜20:20(予定)受付16:15
会場:京都工芸繊維大学 東1号館5階E1-501
参加費: 会員:2,000円 一般:5,000円 学生:2,000円
定員:40名

詳細は下記サイトで。
http://www.hcdnet.org/event/hcd-net-salon/5_hcd-nethcd.php

第1回ウェブ学会シンポジウム

第1回ウェブ学会シンポジウムがさっきまでUSTREAMで中継されていました。
(アーカイブページ:午前午後1午後2午後3

私は友人からのメールで知ったんですけど、twitterで見つけて途中から参加した人も多かったみたいです。

質疑はtwitterでのみ受け付けるというのも含めて、会場に行かなかった人にとってもかなり臨場感のある会議でした。ライブに参加できるのって面白い。

8月に確か天下一カウボーイ大会のUSTREAM中継をたまたま見て、すごい!!って興奮して学生に話をしていたら、京都産業大学では大教室での講義にtwitter参加を取り入れたら出席率がとても良くなったという話を教えてくれました。大教室の講義系の授業って、ライブなのに参加感がなかったんだろうな。ウェブ学会のつぶやきもtwitterでは「#webgakkai」で辿れるけど、この種類のつぶやきはライブでないと散漫すぎて多分つまんない。なんなんだろうなぁ、この微妙な違い。。。

USTREAMのメニューには、Mobile、Sports、Entertainment、Gaming、Music、Animalsといっぱいあります。確かに、この辺がライブコンテンツと馴染みがよさそうだけど、一般企業の会議にもtwitter的なもの・USTREAM的なものを取り入れていくツール、必要だと思う。声の小さい人も参加しながら進行できる仕組み。動画だけじゃなくてスライドをシェアしながらという会議だってあるし。

午前中は会議で出かけていてシンポジウム見れなかったから、これからUSTREAM見ようと思ってます。

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ustream画面
 
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ウェアラブルとユビキタスの世界

こんな講演会があります。 面白そうです。
私は授業があるので残念ながら行けませんが、興味ある人はぜひ行ってレポートしてください。

神戸大学塚本研究室五周年記念 研究発表会& 講演会
〜ウェアラブルとユビキタスの世界〜

http://cse.eedept.kobe-u.ac.jp/5syunen/

2009年10月30日(金) 13時~17時20分
神戸ファッション美術館オルビスホール 入場無料

<第一部>
13:00〜13:30「ウェアラブルとユビキタスの世界」
塚本昌彦(神戸大学教授)

13:30〜14:00「ウェアラブルとユビキタスの研究」
寺田努(神戸大学准教授)

14:00〜14:20 再現可能か!ルミナリエステージショー2008
塚本研究室

14:30〜15:15 特別講演1「ウェアラブルとユビキタスのインタフェース」
増井俊之(慶応義塾大学教授)

15:15〜15:50 パネル討論会「インタフェースの未来」
増井 俊之 vs.角 康之(京都大学准教授)、音川 英之(シャープ)

16:00〜16:45 特別講演2「ウェアラブルとユビキタスとアンドロイド」
石黒浩(大阪大学教授)

16:45〜17:20 パネル討論会「サイボーグ vs アンドロイド」
石黒 浩 vs. 林 譲治(SF作家)、羅 志偉(神戸大学教授)

<第二部>
17:30〜19:00 5周年記念会

<第三部>
19:30 懇親会